断捨離中に出てきた父親の日記。お金の事しか考えてなかった頃⑩
工場のアルバイトが終わると、大阪環状線の天満駅に向かった。
お姉さんがここの駅で降りなさいと言っていたからだ。
最初は梅田が待ち合わせ場所だったが、私が「3日ほど風呂に入ってないです。」
と言うと、待ち合わせ場所がこちらになった。
天神橋筋六丁目辺りだ。
駅の階段を降りて行くと直ぐに分かった。
この辺りは、どちらかというと、庶民的な雰囲気だ❗️
そこに北新地の高級クラブに勤めているようなお姉さんが立っているのだ❗️
はっきり言って、
ハナテン中古車センターにフェラーリが一台置いてあるようなもんだ❗️
通りすがりの男たちはみんな振り替えって見てる。
恐れ多くて近付きにくかったが、そういう訳にもいかず、恐る恐る近づき声をかけた。
「お久しぶりです。川上です。」
「あらっ‼️ ちゃんと生きてるやん❗️ 私のとこすぐそこだから、とりあえずお風呂入りなさい。」
女性の方に年齢を聞いたり出来ないので、聞いたことないが、確か10才位年上だった❗️
なので、お姉さんが私と話す時は、ほとんど命令形だった。
周りの人が見たら、夫婦や彼氏彼女の関係には絶対見えないだろう‼️
言ってみれば、女王様がペットを連れて歩いているようなもんだ。
天神橋筋から脇道をちょっと入って行った所にそんなに大きくなかったような気がするが、
いかにも、持ってますという方が住んでますみたいなマンションだった。
オートロックの中に郵便受けがある。
くだらないチラシを入れる事が出来ないようなタイプだ。
早速、お風呂に入れてもらった。
風呂に入るとシャンプーとかリンスとか石鹸が置いてあるのだが、見たことも聞いたこともないブランドみたいな名前が英語で書いてあり、その文字すら読めない物ばかり置いてあった。
これまではお風呂に入るのは当たり前の事だと思って感謝すらした事もなかったが、
毎日お風呂に普通に入れる事がどれだけ有り難い事かを実感した。
今思うと、この頃から、何事にも感謝出来るようになっていった。
やはり、人間、苦労した方がいいのだろうか‼️
賛否あるとは思いますが❗️
風呂からあがると、わざわざ買って置いてくれた上下お揃いのジャージがあった。
ジャージなのだがジャージに見えないようなジャージだった。
これもどこかのブランド物みたいだったが、読めないような文字だった‼️
英語かどうかも判断出来なかった❗️
「じゅん君、前、焼肉奢ってくれたでしょ。今日は私が焼肉奢るから。」
有り難いお話です。
ていうか、焼肉奢ってくれと言われても、今じゃ、ホルモン定食くらいしか奢れない❗️」
表に出ると当たり前のようにタクシーに乗った。
なんでも、このお姉さんは、ここ10年くらい電車やバスに乗った事がないらしい。
移動は全てタクシーだ。
こういう方々がいるから経済がまわるのだろう❗️
私はこの時、まだ、車の免許を持っていなかったので、どこをどう走っているのかわからなかったが、着いた所は、なんと会員制の焼肉屋さんだった‼️
焼肉屋さんに会員制ってあるわけ‼️
私は大阪の焼肉屋、某食道園という所に勤務していたが、会員制の焼肉屋さんなんて聞いた事がなかった‼️
それに全席個室。
今なら居酒屋さんでも個室とか普通にあるが、当時の個室といえば別料金のサービス料がつくような所だった。
料理はオーダーもしていないのにどんどん出てくる。
それも綺麗なお姉さんが全て焼いて取り皿にのせてくれるので、私は何もしなくてもよい。
焼肉を食べながら死に損ないの私の話を色々聞いてくれた。
「借金はどれくらいあるの⁉️」
「1180万円です。妹さんが全て計算してくれました。」
「えっ⁉️ そんな程度⁉️ 大した事ないね。」
「はぁ‼️」
実はそんな程度で自殺を考えてました。
とは言えなかった。
「うちのお店に来るお客さん、そんな程度の借り入れしてる人いっぱいいるよ。運転資金は常にいるからね。」
そういうもんなんですか⁉️
私は世の経営者と言われる方々はみんな無借金経営をしているもんだと思っていた。
お店をされている方々も当然そうだと思っていた。
そういえば、私もそんな事で借金してたんだ❗️
人間、誰かに話を聞いて貰うと随分落ち着くものだ。
どのような業界でも営業のトップの皆さんは聞き上手だと聞く。
何事も自分が喋るのではなく、聞くことに気をつけるようになったのはこの頃からである。
「まぁ、しばらく、落ち着くまでうちに居なさい。」
また、命令形である。
だが、全く違和感はない。
「はい。」
私は申し訳なさそうな返事をした。
つづく🙇♂️